鈴木一史 代表取締役 / 左官職人

三浦の土でかき落とし仕上げ|地元の土を使った空き家再生の土壁施工記録

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三浦の土でかき落とし仕上げ|地元の土を使った空き家再生の土壁施工記録

神奈川県三浦市で採れるた土を使って、地元の空き家再生プロジェクトの玄関からの大壁を仕上げました。

高さ約4〜5mの吹き抜け壁に地元の土を厚付けし、剣山でかき落とす

 

この記事では土の調合から施工手順、完成した空間の様子まで詳しくご紹介します。

三浦の土と練建築舎さん——今回のプロジェクトについて

今回お声がけいただいたのは、三浦市を拠点に空き家再生プロジェクトを専門に手がける設計士、「練建築舎」さん。

ご自身も三浦に移住され、長年この街に根を張ってきた方です。

以前、京急三崎口駅近くの「mito cafe」さん(自動車整備工場に併設されたカフェ)でも、一緒に地元の土を使った

土壁塗りワークショップを開催したご縁があります。

今回は練建築舎さんご自身が購入された物件のリノベーション。「地元の土を使った、デザイン性の高い土壁を」というご依頼をいただきました。

ご夫妻が自らリノベーションに携わり、大工仕事から左官の仕上げまで手慣れた手つきでこなされる姿がとても印象的でした。

三浦の土の特徴と調合の工夫

シルトが多く、粘りが少ない土

三浦の土は壁土として使うには、粘土分(クレイ)が少なく、シルトが多いという特徴があります。

シルトとは砂と粘土の中間の粒子で、粘りが弱く単体では固まりにくい素材です。

そのままでは塗り付けた後にほころびやすいため、今回は粘土分の多い土を別途ミックスし、細かい粒子を補って強度を出す調合を行いました。

完成した土壁はセメントで固めたかき落とし壁に近い硬さがあり、「土壁なのに硬い」と感じるほどです。

 

【ポイント】 土壁の強度は「粘土の量」で決まります。粘土分が多いほど固く、少ないと崩れやすい。

三浦の土のようにシルト質が強い場合は、粘土を加えてバランスを調整することで壁として使えるようになります。

スサなし・セメントなしへの挑戦

今回はあえて藁などのスサ(繊維)を入れずに施工しました。スサなしはひび割れリスクが上がりますが、仕上げがかき落としのため、

多少のひびが入っても目立ちにくいという判断です。

セメントも入れません。セメントなしの土壁は「乾燥することで固まる」性質があるため、施工タイミングの自由度が高い一方、乾燥に時間がかかります。

今回は年末に塗り付け、約1ヶ月の乾燥期間を設けてから年明けにかき落としを行いました。

 

【土壁の不思議な性質】 セメントを使わない純粋な土壁は、固まった後でも水を加えれば元の土に戻せます。つまり剥がして水で練り直せば再利用が可能。固まっても土に還る——この循環性こそが土壁の最大の魅力のひとつです。

施工プロセス——年末に塗り、年明けにかき落とす

① 下地の確認と調合 三浦産の土に粘土分を補い、かき落としに適した配合に調整。セメント・スサともに不使用としました。

② 厚付けで塗り付け(年末施工) 玄関吹き抜けの高さ4〜5mの壁に、かき落とし用の厚みで塗り付けます。年末にこの工程を完了させました。

③ 約1ヶ月の乾燥期間 セメントなしのため、乾燥でゆっくりと固まるのを待ちます。焦らず時間をかけることが、仕上がりの鍵です。

④ 剣山でかき落とし(年明け施工) 縦方向にラインを刻み、「上昇気流」のような流れを表現しました。玄関を入ってすぐ目の前に広がる大きな壁面に、伸びやかで大らかな表情をつけることが目標でした。丸みを帯びた出隅(ですみ)はクリアファイル(下敷き)を切った型で成形し、土壁ならではの柔らかい仕上がりにしています。

完成。土壁が光を吸う瞬間

完成見学会のタイミングで撮影させていただきました。

玄関を開けると、正面に焦げ茶色の大きな土壁がどんと広がります。

漆喰の白い壁とは異なり、照明の光を柔らかく吸収してぼんやりと温かく輝く——影の映り方の美しさが土壁の最大の魅力です。

タイルの色、古木の階段、真鍮のブラケット照明。

すべてのマテリアルが三浦の土壁の焦げ茶グレーと呼応して、ひとつの世界をつくり上げていました。

天井を抜いて木の梁を見せた開放的な空間、古材を活かした建具、黒いタイルのキッチン天板——練り建築者さんの空間センスが随所に光ります。

土壁はその中でひときわ存在感を放ちながらも、空間全体に溶け込んでいました。

その土地の土が、その土地の暮らしを彩る

三浦の土はとりたてて珍しい素材ではありません。でもその土地で採れた土で、その土地の家を仕上げるという行為には、単なる素材選択を超えた意味があると感じています。

壁に暮らしが積み重なっていくことで、この家はどんどん三浦らしくなっていく。土地の色を宿した壁が、そこに暮らす人の記憶と混ざり合っていく。そんな願いをこめて施工に向き合いました。

まとめ

  • 三浦の土はシルト質が多く、粘土を補って調合することで壁土として活用できる
  • かき落とし仕上げはひび割れが目立ちにくく、繊維なし・セメントなしの施工に向いている
  • 乾燥に約1ヶ月かかるが、その分丁寧な仕上がりが得られる
  • 土壁は水で戻せばやり直せる、サステナブルな仕上げ材
  • かき落とし土壁は影の映り方が美しく、照明との相性が抜群
  • 地元の土を使うことで、その土地らしさを空間に宿すことができる

かき落とし仕上げの土壁は、選択肢のひとつとしてぜひご検討ください。三浦近郊での施工はもちろん、他地域の土を使ったご相談もお受けしています。

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